『非劇 Higeki』対談第一弾!(北川陽子(FAIFAI)×中林舞×篠田千明)

ー 今回の肝でもある「集団制作」について、詳しく教えていただけますか?

中林:集団制作じゃない時は、みんなでやる場所が少し高い位置にあって、ある程度みんな稽古初日までに材料を出してきて乗せ合って、あとは演出家がどうするか決める。例えば役者だったら、台本を読んで自分で解釈したものを持ってくるし、それが力の見せ所だったりもする。普通は(乗せ合う前の)0の段階では、誰にも口出しされない。でも、集団制作だと0からみんなで話し合って始めるから、大変。でもFAIFAIも、最終的には演出家がまとめている。FAIFAIは0から始めるから、0の段階にすごく時間がかかって、全然稽古初日が来ないんですよ。通常の稽古期間の2/3以上が経っても0の段階にいて、直前になってようやく「じゃあこれを乗せよう」ってなる。でも共通認識が出来てるから、まとまる速度は早いんだよね。

篠田:でも今回「非劇」では、稽古初日にモノを出そうとしているの。それは傍目から見たら、稽古初日に台本があると同じ形かもしれないけど、全然違う。一緒の時間を過ごさなくてバラバラでも、最低限まとまるギリギリのフレームっていうのがあって、その最低限のフレームさえ整っていれば、全然違う考え方とか全然違う人種の人たちでも、やれるんじゃないか、って。

北川:テーマは何だっけ?
篠田:テーマは「ヒゲキ」です。
北川:「ヒゲキ」は、あの悲劇?
篠田:あの悲劇もだけど、「劇に非ず」っていう。
中林:それも造語だから、共有するのが難しいんだよね。
北川:いろんな意味に取れちゃうもんね。
篠田:逆に集団制作じゃないやつは、去年の「機劇〜」がそうかも。全部一対一だから、集団ではなかった。でも一対一で話していることを4つやってみたら、一人一人で話していた分他の人に伝わりにくかったというのがあって、今回は集団制作をすることが「エンタメ」にする最短の方法だと思ってる。最短か分からないけど、最良の、自分のできる方法。


ー 篠田さんの中で「エンタメ」の定義とは?

篠田:1000人くらい入れる大ホールってイメージ。
北川:エンターテインメントって、ずっと「無」だと思ってた。なにも考えないで、ただ観れるだけのもの。「エンタメ涙」って言うんだけど、ただ泣いて楽しんで涙を流すために観る、エンタメ映画ってあるでしょ。
篠田:それは型の話になっちゃうから出来ないかな。
北川:「エンタメ涙」はイメージね。
篠田:「ループを父、ポルノを母」にして非劇を生まれた、という感じかなと。分かる?(笑)

中林:どうして篠田は今回「エンタメ」だって言おうと思ったの?
篠田:去年「機劇〜」を結構やりきった感はあって、達成感はあったんだけど、全然伝わってないって愕然としたってのが単純な理由。
中林:篠田ほど「エンタメ」に遠い人はいないってイメージがあるから、あえて言ってるとしか思えない。普通は「テニスの王子様」のようなものを想像するからさ。
篠田:「テニスの王子様」をやるかと聞かれたら、やりませんって言う。でも「エンターテインメントをやりますか?」って聞かれたら、変わらず「やります」って言う。
北川:でも篠田の作品ってめっちゃ考えないと観れないじゃん。それが無に帰すんだよ?
中林:よほど分からない、ってなりそう(笑)
北川:でも、情報量が膨大で複雑なものを「無」に帰することって作家として1つの夢というか到達点だと思うから、「非劇」がそうなるのであれば私はすごくその作品が観たいと思う。
篠田:まぁ最終的になにも考えないくらいまで磨けたら、一番かな。吉祥寺シアターには「テニスの王子様」のような物語を求めている人は来ないと思う。そういう人たちに向けて「テニスの王子様」をやっても、むしろ考えさせちゃう。だから型をやるんじゃなくて、お客さんになるべく疑問がないように、ってこと。劇場って大事なんだと思ったよ。


ー 「非劇」に向けて
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北川:「非劇」とは、とか話したりしてるの?
篠田:それについてはあまり話してない、なかなか全員集まらないから。
中林:その今の印象だと、篠田の仕事がすごい増えるんじゃないかな、って思ってる。篠田は0から一軒一軒それぞれのところに回って、話して、一緒に作って一緒に乗せる、ってところからやるから。
篠田:今考えてるのは、外のことと中のことを同時進行させつつ、自分の中では上手く編む、っていうのができるといい。要は、一軒一軒ノックして、どことどこなら繋げられるかな、と考えれば良いのかなと。
中林:大変だなと思うのが、最初に一つ題材を与えられても、話しているうちに実はすごく変わっていくじゃん。どんどん話しながら意訳しちゃうことってある。
篠田:でも劇場をみんなで下見して良かったのは、全員なんだかんだ言ってここでやるのは絶対変わらないんだ、って思って。そこだけは絶対みんな変わらないから、だから「演劇」とか「舞台」じゃなくて「劇場」を考えればさ。
北川:ものすごい発見だね(笑)
中林:よく演出家の方で「役者同士で話されるのが嫌だ」って方もいるけど、話しているうちにどんどん意訳しちゃってコンセンサスが取りづらくなるからだよね。でも篠田はあえてそれをさせようとしてるじゃない。篠田がイメージしてるものから離れていく可能性だってあるけど、そのまとめ方をどうするか、だよね。
篠田:今回はなるべく違う集団から集めてきているつもりだし、結構チャレンジングなことだと思っている。一緒にいなかったり、一緒の時間を共有してなくても、こういうことってできるのかな、みたいな。他の担保がない、単純にいい作品を作る、という目的だけで、しかも土台から作ってるから。

ー終ー


北川陽子(きたがわようこ)
作家/脚本家/演出家
2008年 東京を中心に活動する劇団「快快 /FAIFAI」結成。主宰としてほぼ全公演の脚本を手がける。
2010年9月 代表作「My name is I LOVE YOU」でスイスのチューリヒ・シアター・スペクタクルにてアジア人初の最優秀賞「ZKB Patronage Prize 2010」受賞。第57回岸田国士戯曲賞 最終候補に「りんご」上演台本選出。パフォーミングアーツにおける斬新な表現を開拓し、演劇という枠に揺さぶりをかけ続ける「Trash&Freshな日本の表現者」として国内外で注目を集める。2013年 パフォーマンス、ヴィデオ作品等を制作するMOTIプロジェクトを林靖高(Chim↑Pom)北川陽子(FAIFAI)を中心に始動。MOTI(モティ)とはヒンディー語で真珠を意味する。蓮沼執太フィル「ZERO CONCERTO 」MV、3331 ART Fair オープニングアクト、等。
その他、シャバクラ!実行委員会としての活動等。

中林 舞(なかばやし まい)
4歳~18歳まで今村昌子、牧阿佐美らに師事して、クラシックバレエを習う。受賞歴有。2004年多摩美術大学にて劇団小指値(現 快快 FAIFAI)を旗揚げ。2012年に退団するまで、ほぼ全作品に出演する。同時に、外部の舞台にも積極的に出演。小劇場からエンタテインメントまで、その活動範囲は幅広い。
役者と平行し、″バンドじゃないもん!″をはじめ、″でんぱ組inc. ″″Ray ″″BiS ″ ″むせいらん″ 等のアイドル・アーティストや、演劇作品に、振付提供も行っている。

篠田千明(しのだ ちはる)
世界を思考嗜好し、人・物・出来事を配置compose作曲する演出家、作家。 1982年東京生まれ。2004年に多摩美術大学映像演劇学科の同級生らと快快(ex:小指値)を結成し、2012年に脱退するまで中心メンバーとして所属する。現在バンコク在住。
作品を創る場に集まる人たちとの集団制作を基本とし、素材を的確に配置するためのコンセプト作りが一番の特徴。そのコンセプトは時にロマンチックに、時にプレイフルに、だけど基本はシステマチックな楽譜のようなコンセプトで全体を構成・制作している。

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